小学校の先生K⑤
ある日の放課後、屋上の踊り場のところで先生と待ち合わせをした。
先に着いた僕はとにかくドキドキしていた。ドキドキして心臓が飛び出しそうだった。
僕は性欲旺盛だったので、あんなことやこんなこと、というか、
キスとかセックスとかそんなことばっかり想像していた。
本気でそんなことを出来る気がしていた。
コツン、コツン。
階段を誰かが上がってくる音がした。
コツン、コツン。
誰だろう。先生だよね?
僕は先生かどうか分からないから息をひそめていた。
コツン、コツン。
「ハクくん?」
やっぱり先生だった。
「良かった~。先生で」
分かってはいても、先生で安心した。
先生とこんなところで二人きり。それだけでものすごく興奮していた。
隣に座ってくれた先生。良いにおいがする。
こんなに近くに先生がいるなんて、本当にドキドキだ。
緊張してせっかく先生が近くにいるのに顔を見れない。
見たいのに見れない。顔が熱くなってるのを感じた。
ここは電気がついていないから、窓から入ってくる光のみだった。
十分じゃないからかなり薄暗かった。それでも顔を見れなかった。
下を向きながら、たわいもない話をした。
していたのは先生だけど。僕は緊張で話せなかった。
先生が気を使って話をしてくれていた。
お互い無口になった。先生は困ってただけかもしれないけど。
僕は無口でも、何もなくても、先生の横にいるだけで幸せだった。
先生が大好きだった。先生と結婚したいって本気で思った。
なんて伝えたらいいのか分からなかった。
でも僕は勇気を出して話し始めた。
ぼく「先生、前にやりとりしてたの覚えてる?連絡ノート」
先生「覚えてるよ~。ハクくんたくさん書いてくれたね」
ぼく「うん。先生の気を引きたかったから頑張ってたくさん書いたんだ」
先生「ありがとう」
ぼく「あの中で書いたこと、覚えてる?」
先生「うーん、、、どのことかな?」
ぼく「先生のこと、好きってこと」
先生「・・・」
ぼく「僕、先生のこと大好きなんだ。ほんとに先生と結婚したいって思ってる」
先生「ありがとう。ハクくん。ハクくんにそう言ってもらえてうれしいよ。」
子供をいなすように、優しい笑顔で先生は言った。でも僕からしたらそういう見え透いた嘘というかごまかしというか、真剣に受け取ってもらえないことが許せなかった。調子のいいこと言ってかわす気が満々だった。
ぼく「本気だよ?冗談だと思ってるでしょ?」
先生「ううん。本当に嬉しいよ。ありがとう。ハクくんが大人になったらまた言ってもらいたいな。大人になるまでずっと好きでいてくれるかな~?」
先生は笑いながら、両手の人差し指で僕のほっぺたをグリグリしながら言った。
ぼく「うん。先生と結婚するもん。ずっと大好き」
先生「ありがとう」
先生は僕のあたまをポンポンとして立ち上がろうとした。
僕は抑えきれなくなって、先生に飛びついた。
「先生!」
先生にタックルするように抱きしめて先生と僕は床に倒れた。
ギューって抱きしめながら「先生、好きなんです」といった。
顔を先生に押し付けていたから、先生の顔は見えなかった。
先生「ハクくん。離しなさい。離してハクくん。」
さっきまでとは打って変わって怖い口調になった。
先生は少し強い力で僕の手をつかんだ。
怖さと、罪悪感と、そんな負の気持ちで僕はなんだか我に返った。
手を緩めながら先生の顔を見た。
先生は鬼の形相になっていた。
先生「離しなさい」
僕はパッと先生から手を放して体を起こした。
先生も怖い顔のまま体を起こした。
先生「ハクくん。いい?これは犯罪よ。こんなことしてはダメ。わかった?」
ぼく「・・・」
先生「ハクくん。約束して。もう絶対しないって。ね?」
ぼく「うん・・・」
先生「約束よ?絶対だからね。このことは誰にも言わないから。ハクくんも忘れてね」
ぼく「・・・」
先生「約束だからね。じゃあ、もう行くね。」
ぼく「・・・」
先生はそそくさと階段を下りていった。
僕はやってしまった、、、という罪悪感でいっぱいだった。
逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。なんてことをしてしまったんだ。
先生に嫌われてしまう。嫌われてしまった。
何とも言えない抑えきれない嫌な感情が僕を襲った。
いてもたってもいられなくなり、僕は全速力で家へ帰った。